モンサンミッシェルへ
ついさっきまで、ギルバートグレイプにでてくるお母さんみたいなドライバーの運転するタクシーに乗ってどこまでも続く平和なフランスの田園風景を眺めていたのに、今度は、ボートにプロペラを立てたくらいの大きさのちっさなヘリコプターに乗って、ゆっくりと滑走路を走っている。「これで本当に飛ぶのかなぁ」と心配になるくらいの簡単な仕組み。
いざ、滑走が始まっても、動きはやっぱりとてもゆっくり。
遠くに見える、モンサンミッシェルまで、これで本当にいけるのかと、ちょっと疑り始めるほどに…。
よたよたと心配な早さで走行。よっこらしょっと浮き上がる。ゆっくりと確実に。
草原の向こうにひろがるノルマンディーの田園風景。きれいだなぁと思いたいのだけれど、実は、強風が吹き付けて、とんでもなく、怖い。パイロット曰く、この地方はいつも強い風が吹いているらしい。
モンサンミッシェルが見えてくる。あっというまに、どんどん大きくなっていく。
さっきまで一休みしてくつろいだモンサンミッシェルの自分の泊まるホテルの場所を探してみる。キャンピングカーの列の上を飛び越えて、幻想的なお城を眺める。
カラフルなラグのように、いろいろな緑の絨毯の上を飛ぶ。飛行機よりもずっと低く、ちょうど箱庭を眺めるような高さ。
やさしく手でなでたら気持ち良さそうな、もこもことした樹々。
フランスらしいポプラの並木道。あの青い緑の畑にはいったいどんな野菜が植えられているのだろう?
米粒サイズの羊たち。
車がゆっくりと走る。自分もさっきまで、あんな感じで地面を走る車の中にいたのだ。
ますます雲行きが怪しくなる。霧のような細かい雨粒。ちょうど、さっき、モンサンミッシェルから眺めていたポプラ並木がすぐ眼下に行儀よく並ぶ。
眺める角度によって、その表情をかえるモンサンミッシェル。
正面からだとわからなかったけれど、実際はかなり切り立った崖の上に建っている。長い時間と多くの犠牲を払ってつくられた修道院。
いまでは、周囲を完全に水に囲まれることは少なくなったモンサンミッシェル。この日は、満月。
夕刻が近づくにつれ、昼間よりも海の水がせまってきているのが、空からでもわかる。
どこまでも続く潟の砂地を、キャラバンのように馬にのった人々の列。
目指すのもモンサンミッシェル。
現在では、世界遺産としてフランスでも指折りの観光地。
そして、いまでも、モンサンミッシェルは、大切な巡礼の地でもある。
かつて、多くの敬虔なキリスト教徒は、命がけでこの泥沼のような潟をわたりモンサンミッシェルへとむかったという。なかには、潮にのまれてなくなる方もいたという。
雲の向こう、水面に一筋の陽の光。「あそこに神様がいるよ」と言われれば、信じてしまうだろう。
もう、さっきまであった、空を飛ぶ怖さは、消えている。
この世の終わりのようにも見えるし、この世の始まりのようにも見える。
ますます深くなる霧雨のなか、ゆっくりとあらわれるモンサンミッシェル。
夢の中の景色のように、幻想的で、どこか寂しくて、美しかった。
刻々と姿を変えるモンサンミッシェル。前回に訪れたときは、青い空の下、堂々とそびえていたけれど、今回の空から見たモンサンミッシェルは、もしかしたら、幻で、明日には別の場所に消えてしまいそうなしまいそうなモンサンミッシェルだった。
きっと、この地に住む人は、毎日地平線の向こうに、日々、季節ごとに表情をかえながら佇むモンサンミッシェルを眺め暮らしている。
かわらない、あたりまえの、なんてないことのひとつとして。
東京に住む僕たちの、時々彼方にちいさな富士山がのぞくそのすがたを見つめた気持ちと同じように。
あっというまに、時間になって滑走路が見えてくる。
着地は、なぜか、滑走路ではなく草原に。けっして失敗ではない、はず。
ちいさく佇むモンサンミッシェル。この草原をこえて、砂地の潟をこえてた散歩の終わり。
さっきまで米粒だった羊達が、「わざわざ、こんなとこまでご苦労さん」とでもいいたけに、迷惑そうにこちらの様子をうかがっている。
空からモンサンミッシェルを眺めるためには…。
ULMという小型のグライダーかヘリコプターをつかってモンサンミッシェルを空から見ることができます。
どちらもパイロットとの2人乗り。
予約をしておいた方が確実なので、日本からメールで希望日時と人数、飛行時間をつたえておくといいと思います。(メールの返事などは、かなりアバウトなのでちょっと心細いですが…)
小さな民間飛行場までは、モンサンミッシェルの観光案内所かホテルからタクシーを手配してもらって向かいます。送迎はありません。往復で60ユーロくらい。時間は30〜40分くらいかかります。
ノルマンディー地方は風がつよく天候によってはフライトがキャンセルされることがあるとのことです。当日、現地の天気と飛行可能かをあらかじめ電話で最終確認する事をお勧めします。飛行と移動を含め3時間くらいは必要だと思います。バスや電車の乗り継ぎを考えると、日帰りよりも、モンサンミッシェル周辺、もしくは、島内のホテルを確保して一泊で滞在がおすすめです。
今回、僕は、「ノルマンディー ULM」http://www.normandie-ulm.comを利用しました。ご参考に。
このエントリー何度もみてしまいます。
上からみるモンサンミッシェル、素敵ですねぇ。はぁ。
以前わたしがモンサンミッシェルへ行ったときは普通にバスだったので、モンサンミッシェルの魅力を全部味わえていない気がしていたんです。
今度は絶対に空から眺めようと決意しました。
投稿情報: iso | 2011年6 月 3日 00:15
isoさん
ありがとー。ちょっと怖かったけど、素敵でしたよー。グライダーみたいなののほうが近くによれるっぽいので、行かれた時はぜひ!
なんか乗り物の形と大きさ的にもラピュタの海賊たちが乗る、蜂みたいな小さい飛行機のヘリコプター版みたいだし、田園風景も、そしてなによりも空から見るモンサンミッシェルが霧の中にかすむ姿は、ラピュタ!!
次の渡仏はぜひ!
投稿情報: mitayuu | 2011年6 月 3日 10:22